山本精神分析オフィス

精神分析コラム

2019.09.19

1.原始的引きこもり-原始的防衛

原始的防衛

乳幼児は過剰な刺激や苦痛にさらされると、眠ってしまうことが多い。 違った意識状態へ心理的に引きこもることは、自動的で自己防衛的な反応であり、幼少の子どもに見られる。

同じ過程の成人版は、社会的あるいは対人状況から撤退し、他者とかかわりを持つストレスを内的ファンタジーの世界の刺激で代用してしまう人々において見られる。 自分の意識状態を変性させるために何らかの薬物を使用する性癖もまた、一種の引きこもりと考えられる。 引きこもりよりも「自閉的ファンタジー」という用語を好む専門家もいる。 この自閉的ファンタジーというラベルは、個人的な接触から尻込みしてしまう一般的な傾向をより具体的に指している。

ほかの赤ん坊に比べて、ストレスに対してこうした方法で反応する傾向が気質的に著しく強い赤ん坊もいる。乳幼児の観察者が、引きこもりやすい赤ん坊は特に敏感なのだと気づくことも時々あった。このような傾向が体質的に顕著な人は、豊かな内的ファンタジーをつくり出していて、外的世界の方は問題に満ちているか情緒的に不毛であると見なしているのかもしれない。

養育者やその他の初期対象が情緒的に侵入したり侵害したりするような体験は、引きこもりをさらに強化することがある。ある人が習慣的に引きこもり、不安に対するその他の反応の仕方を排除するほどである場合。分析家はその人のことをシゾイドだと描写する。この引きこもりという防衛の明らかな欠点は、その人が対人関係の問題解決に積極的に関与することから離れていくということである。シドイドの伴侶を持つ人々は、どうやったら相手から何らかの情緒的な反応を引き出せるかについて途方に暮れていることが多い。

もっとも典型的な不満は、「彼はただテレビのリモコンをいじくっているだけで、私に返事することさえ拒むんです。」というものである。自分自身の心の中に引きこもるのが慢性化している人々は感情的次元のことにかかわることに抵抗することで、自分を愛してくれる人の忍耐力を試すことになる。

防衛戦略としての引きこもりのおもな利点は、現実から心理的に、逃避していながら、現実の歪曲をほとんど必要としないことである。引きこもりに頼る人々は、外界を間違った意味にとるのではなく、そこから撤退することで自らを慰める。その結果、彼らは格別に感受性が鋭いことがあり、彼らのことをいてもいなくてもいいようなものだと思っていた人は、 しばしば大いに驚くことがある。そして彼らは自分自身の感情を表現する性向が欠けているにもかかわらず他者の感情を極めて敏感に感じ取ることがある。シゾイドの中で比較的健常なほうの人たちは、非凡な創造性を有する人々が見出される。芸術家、作家、理論科学者、哲学者等。習慣ら距離をとる能力が、彼らに独創的なコメントをする独特の能力を与えている。

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