山本精神分析オフィス

精神分析コラム

2019.08.22

心的外傷体験

パーソナリティ障害

心的外傷体験は脳の「行動」記憶システムに主に保持されている不完全な体験だと仮定される。 心的外傷の影響は非言語的に認知され行動・情緒・感覚的な印象などの形で反復的に表される。

これらは「ナラティブ」記憶ステムにおいて、言葉による表現や理解がなされなければならない。 言語的なものと非言語的なものとが統合されると、外傷体験の認知が全体的なものとなる。
そしてその時、しばしば徐反応が生じ、この時初めて、人は外傷的出来事をはっきりと全体的に体験する。 この際、まさにその時出来事が起こっているかのように多少なりとも反応する。 こうして外相出来事は真の意識的記憶として処理されるようになり、時の経過とともにその影響も薄れていく。

パーソナリティ障害にかかわる行動は、心的外傷反応と同じように反復的に作用するので両者は互いに強化し合ったり融合したりする。 境界性パーソナリティ障害の傾向は、意識的記憶から乖離されている回避行動という外傷反応によって強化されているといったことはないだろうか? それとも境界性パーソナリティ障害の症状が後退するにつれて、外傷症状(侵入的な感覚や行動)が前面に出てくるのだろうか?を観ていく。


参考文献:ジェームス・F ・マスターソン『パーソナリティ障害』

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