山本精神分析オフィス

精神分析コラム

2018.09.13

治療者から見た抵抗(逆抵抗)

抵抗

フロイトとその後継者たちは、最初、転移と抵抗はまったく異なる現象といて切り離して考えていたが、後になって、転移には患者を危険から守り、現象を維持しょうとするような、抵抗とみなされるべき性質があることを認めた。転移を抵抗として概念化し、患者は分析者をあたかも過去の重要な人物とみなすことで、現代の不快な情緒を感じたり、いやな記憶に直面するのを避けていると指摘した。患者は、自分の中に両親や同胞と競争したい願望をあるのを認めるかわりに、両親の特性を分析者に重ね合わせて、分析者が挑発的で、拒否的で、操作的だと体験するのである。

逆転移は、治療者の患者に対する転移性の反応である。転移は心の普遍的な現象で、その人と環境との関係性を支配するものであり、すべての人間関係に存在しているからである。 人との交流は転移によって規定されるが、治療者も例外ではなく、転移に基づいて患者に反応する。

分析者は、治療の成果を評価するために、患者が自分たちのことをどのように体験しているか、十分に気づいている必要がある。同様に、自分が患者をどのような人物として体験しているについても極めて敏感でなければならない。もし、ある女性が治療者のことを愛すべき母親と体験しているなら、彼女はおそらく、治療者の解釈を「おいしいおっぱい」と受け取るだろう。もし、彼女が陰性転移を治療者に向けていたら、治療者の解釈を「吐き出す」べきまずい食べ物として体験するだろう。 もし、クライエントがアンビバレントeな転移を治療者に向けていたら、治療者のコメントのある部分は受け入れ、ある部分は拒否し、残りの部分はアンビバレントに感じるだろう。治療者の患者に対する逆転移も、こうした患者の転移とそっくり同じと考えてよい。

もし男性治療者が、患者のことを愛すべき息子のように体験していたならば、彼は患者の語る内容に優しく応じ、あたたかい感情に動かされて介入するであろう。それとは反対に、治療者が患者を憎むべき兄あるいは父親とみなすならば、彼は必ずや患者が持ってきた話題に敵意を感じ、傲慢なニュアンスのコメントをするであろう。

もし、治療者がアンビバレントな逆転移を患者に向けるならば、患者への応答はあるときは暖かく、またある時は敵対的に、そして大部分はアンビバレントになるであろう。フェニヘル(Fenichel)はこう述べている。「治療者の振る舞いは、一人ひとり異なっている。こうした治療者のパーソナリテイの違いは、患者の行動つまりは転移に影響を与える」と。

あらゆる対人関係において、転移は、これらの役割を補うような反応を相手から引き出すものである。例えば、サディストは相手にマゾヒステックな反応を誘発し、服従的な人は、相手の攻撃性をかき立て、不安の高い人は、周囲が自分をコントロールしてくれるようにしむける。治療者も患者も転移性の願望や反応を心理療法という出会いの場に持ち込み、転移と相補的なるような役割を相手が引き受けてくれるよう無意識のうちに振る舞うものである。たとえば、非常に控えめな患者ないし治療者は、パートナーが自分に対して批判がましくなったり、あるいは、安心感を与えてくれるような転移を起こすのを無意識のうちに歓迎している。

転移性の反応と同じように、逆転移の反応の由来も当然、幼児期にさかのぼるので、患者と治療者は、転移∥逆転移関係の中で「相補的なファンタジー」を作り上げ、自分たちの幼児期に欠けているものを埋め合わせしょうとする。患者は治療者のことを、あるいは治療者は患者のことを理想の父親や母親、きょうだいや配偶者であるかのように空想し、「とうとう私はずっと求めていた彼女(彼)を見つけた」と、喜ぶのである。

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