山本精神分析オフィス

精神分析コラム

2018.08.09

逆抵抗とは

抵抗

心理療法とは、クライエントだけでなく治療者にとっても、不安を強く感じる体験である。 ここ最近、心理療法は、傷つきやすく不完全な二人の人間がたえず影響し合う相互作用であると考えられるようになった。 それで治療の進展を促す治療者の役割と、治療を妨げる治療者の振る舞いにも注意されるようになった。 治療者も、またクライエントと同様にクライエントの語ることが治療者のうちに不安を伴う思考や感情を揺さぶられると、クライエントと同じように防衛的になるのである。
例えば性と攻撃性に関する考えを常に抑圧してきたクライエントが治療にやってきたとき、クライエントは、意識的にまたは無意識的に、性や攻撃性が表れるテーマを治療者と話し合うのを避けようとするだろう。 治療者もまた性的、攻撃的なフアンタジーを抑圧していたならばそのテーマを避けようとするだろう。そして治療者自身の抵抗がクライエントの成長に差し障るだろう。

抵抗は、あらゆる治療において普遍的な現象とみなされている。クライエントはみな、苦しんでいるのにもかかわらず現状のままでいたがるのである。

抵抗と同じく逆抵抗も同じような現象で、どんな治療者も、現在の心理的状態をそのまま保ちたがるのである。
クライエントは治療者に対していろいろな願望や否定的な感情を抱くのであるがそういう気持ちを直視するのに抵抗する。 同様に治療者も自分自身のフアンタジーに直面するのに抵抗する。そのため、逆抵抗がどのように治療に影響しているのか分からなくなってしまうのである。
Barangerは、精神分析治療の過程で、「泣かない患者は治らない」と述べている。 同様に「泣かない治療者は患者を治せない」と言い換えることが出来る。(患者の気持ちに共感できるということ)

治療が進展していないときはたいてい、クライエントの抵抗と治療者の逆抵抗の両者が作用していることになる。治療の膠着は、クライエントと治療者の共同作用なのである。

治療関係が行き詰ったならば、両者にそれについての責任がある。したがって、治療を成功させるには,治療者とクライエント双方の抵抗を効果的に解決することが求められる。 心理療法が、二人の、傷つきやすい人間の絶え間ない相互作用であるとも考えられる。
このとき、治療関係がうまくいかなくなったら、あらゆる人間関係と同じく、たとえ無意識とはいえ二人は結託して治療を進展させない関係を保っているのである。

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