山本精神分析オフィス

精神分析コラム

2013.08.03

集団精神療法とは

集団精神療法

なぜ集団精神療法は不登校児や「うつ」でひきこもっている人達にとっては効果的な療法なのか?

最近は心理療法の広い領域で集団精神療法や集団療法(グループワーク)が行われ広がりつつあります。

社会生活の多様化が進み、複雑な日常生活を営まざるを得なくなってきております。
それに伴い対人関係もますます複雑になり情緒的な交流も希薄になりつつあります。 対人関係では、個人と集団への関わり方がますます難しくなってきております。 このような対人関係の複雑さに耐えかねて不登校児や出社拒否の人たちがこの社会生活から一歩身を引き家庭内での生活へと余儀なくされているのです。 こういう人たちがどう社会生活という集団に関わっていけばよいのかという問題を明確にし、解決への道しるべになってくっれるのが集団精神療法であります。


集団精神療法については、精神分析辞典には次のように記述されております。

集団精神療法は多くの患者さんを一時に治療しようとする方法ではありません。 一人ひとりの患者さんがお互いに話し合いを通して自らの病気、そのもとになっている性格傾向、考え方、生き方などに洞察を得る過程であります。 作業をしたり、散歩をしたり、あるいは合唱などのレクレーションなどわが国の精神病院やディケアなどで広く行われている集団で行う治療的な関わり方をグループワークとして、集団精神療法とは分けてきたのが適当であります。 (精神分析辞典より)

基本的な方法

グループでは話題をあらかじめ決めずに、思いつくままに何でもいわば自由連想的に話し合うことから始まります。 話し合いを進める前提条件として、グループのメンバーは誰もが(治療者も含めて)平等であり、どんなことを話してもよいし、それによって罰せられないという保証が必要であります。

対象となる疾患

対象となる人たちは、人格障害、神経症圏の人達や、うつ病(神経症性)等。

治療者の役割

治療者はグループのメンバーを選び定め時間、場所などのバウンダリーを維持するという役割を果たします。 治療者は常に中立の立場を維持し、グループのメンバー一人ひとりのコミュニケーション(非言語的なものも含めて)を奨め、理解しその意味を考えます。 また、グループ全体にみなぎる雰囲気、流れに注目し、その源になっている勘定、問題点に解釈をします。 このように治療者は、グループのアドミニストレーターであり、観察者であり、助言者であり、また解釈者でもありますが、同時に治療者もグループの一員でもあるのです。治療者はそのことを十分に自覚することが必要であります。 それ故に治療者もグループメンバーと共にいろいろな感情を体験します。

集団精神療法の効果

効果に関する研究はヤーロム(Yalom.L)のものが最もよく知られています。 まず、自分が独りで悩んでいたことが、メンバーに分かってもらえた。 独りで苦しい体験をしていて誰にも相談できなかったし、相談したとしても分かってもらえないと思い込んでいたことが自分だけの体験ではなかったこと。 あるいは同情をもって聞いてもらえたという経験は何にもまして患者さんの狭められていた生活を開かれたものにすると思われます。
第2にそれまでの生活歴の中で、圧迫的で、馴染むことができない恐ろしいものだった集団が自分を理解し、共感できる人がその中にいるという体験はその後の自分の病理を乗り越える過程に重要な影響を与えます。 また患者さんどうしの励まし合い、横のつながりから自分の心理的葛藤についても、他の人の対処のしかたなども学び、洞察を得ます。また対人関係のあり方についても変化を体験することができます。

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